2024.05.13

「コバヤシ精密工業」がかながわ経済新聞に掲載されました

2024年5月号の【かながわ経済新聞】に株式会社コバヤシ精密工業(南区大野台)が紹介されました。

■【産業あるある情報】株式会社小林精密工業

中小発のIoT電流計、急速に普及
エニマス、大手飲食業や自治体など相次ぎ採用

コバヤシ精密工業(相模原市南区大野台)発のベンチャー、エニマスが開発した「ポータブル通信電流計・ENIMAS(エニマス)」が急速に普及している。施設や工場などで、設備ごとの電力使用量・二酸化炭素(CO₂)排出量をリアルタイムで見える化できるデバイス。大手飲食チェーンで本格採用されたほか、地元・相模原市も導入。市庁舎の脱炭素につなげるほか、周辺自治体にも広がる。現場発のアイデアから生まれた製品だが、今や本業の金属加工を超える成長を見せ、文字通りの「脱下請け」を実現する。

■1台で8台監視
エニマスは、分電盤にある各ブレーカーに専用クランプセンサーを取り付けてデバイス本体と接続する。デバイス1台当たり最大8台(8チャンネル)の設備を監視、消費電流値を測定。集計したデータを、無料の専用アプリを通じ、電力量や電気料金、CO₂排出量として示す。同社によると、電力使用量を見える化するシステムやツールは数限りなくあるものの、どれも施設全体を表示するもの。「どんな設備が、どの程度の電力を消費しているか」が分かるものは少ない。大手企業も同様のシステムを販売しているが、「中小企業が導入できる価格ではありません」(小林昌純社長)と言う。その点、エニマスはポータブル型のため、中小・小規模企業でも導入しやすくなっている。

■大手が大量導入
飲食業界にも広がる。大手飲食チェーンではエニマスを試験導入する際、各店舗の電力使用量をモニタリングした。
その結果、同じ稼働率の店舗であっても、電力使用量に極端なバラツキがあることが判明した。そこでエニマスを通じ、設備ごとの電力使用量を特定すると、バラツキの正体は「業務用冷蔵庫」であることが分かった。2013年製のものと、23年製のものでは、実に消費電力に12倍もの差があったのだ。これにより、大手飲食チェーンでは、設備更新を進め、年間電力料金を4000万円以上も削減。エニマスも120台以上採用することになった。
開発のきっかけは、コバヤシ精密の工場内をLED(発光ダイオード)照明へ切り替えたことに始まる。省エネの補助金を受け、LED照明にしたものの、同時に工作機械1台も導入したため、結局は工場全体の電力使用量が上がり、LEDによる省エネ効果
を証明できなかった。当時、電力使用量の推移は工場全体でしか確認できなかった。「せめて設備ごとの使用量、削減効果を示せるものがあったら…」との思いが開発の出発点だった。

■流れ変わる
とはいえ、18年の開発当初は注目されず、小林社長が私財を投じて、本業の傍らで事業を進めていた。だが、辛抱強く続けていくうちに流れが変わった。20年10月、当時の菅義偉首相が所信表明演説で、国内の温暖化ガスの排出を50年までに「実質ゼロ」とする方針を表明。大手企業もこれに追従する形になり、サプライチェーン(供給網)にも広がっていった。
現在、エニマスは「23年度神奈川工業技術開発大賞・未来創出賞」や、「省エネ大賞・省エネルギーセンター会長賞」「第49回発明大賞・発明功労賞」など、数々の賞を受賞するまでに。「自社製品は続けていくことが大切です。いつか時代は来ます」と力説する小林社長。4年後には売上高21億円、IPOも目指している。エニマスは何も最先端技術を駆使しているわけではない。ありそうでなかったことに着目し、ニーズをうまく捉えた。

イノベーションのタネは、身近にあるのかもしれない。

この記事のポイント
▽自社での苦い経験が製品開発のきっかけ、実践する
▽「続けていれば、いつか時代が来る」と信じ続け、菅首相(当時)の方針で一気に
変わった
▽本業の金属加工業の成長を追い抜く事業再構築を実現
▽「ベンチャー型事業承継」のケースにも

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